CIEEs諸国情報
#13:CIEESからBICへ投資戦略を変更 〜ブラジル経済の成長〜《New!!》
#12:人民元の動向
#11:各国の自動車販売台数
#10:高まるロシアの存在感
#09:各国の発展段階 その2
#08:調整色強める各国株式市場
#07:各国の発展段階
#06:存在感の増すインド経済
#05:堅調な推移を見せるロシアの株価
#04:好調が続く中国経済
#03:中国は本当にバブルか
#02:堅調な値動きを見せる各国株価
#01:堅調に推移する各国経済
CIEEs諸国情報 (12) 人民元の動向
最近の中国の発展は目覚しく、2009年にドイツを抜いて世界第一位の輸出国となったと推定されている。また、2010年には日本を抜き、米国に次ぐ世界第二位の経済大国になると予想されている。世界銀行が、3月17日に2010年の同国のGDP成長率を9.5%と予想するなど、同国の景気は好調だが、依然として、固定資産投資と並んで輸出が経済を牽引している。そこで、輸出に大きな影響を与えると見られる人民元の動向を見ておこう。
1.人民元の推移
中国の通貨である人民元の過去の推移を振り返ると、まず、2005年7月21日にドルに対して2%強切り上げられた。その後、対ドルで2006年の夏にかけて約1.7%上昇。さらに、2007年夏に向けて約5.0%上昇し、同様に2008年夏にかけて約9.5%の上昇となった。しかし、2008年夏以降は、横ばいとなっている。
中国の貿易黒字の増大と海外からの人民元切り上げへの圧力に対応する形で人民元は上昇してきたわけだが、2008年夏以降は1ドル=6.83元程度で膠着している。2007年5月21日以降、人民元の対ドル相場の1日当たりの許容変動幅は±0.3%から±0.5%に拡大されているので、理論的には1ヶ月程度で、対ドルで1割強の人民元高に誘導することは可能である。人民元切り上げが再開されるかどうかは、中国当局の意向次第と言えよう。
図表1 人民元相場(対ドル)

(出典) x-rates.com
(注) 人民元/ドルを逆目盛りで表示、月末値
2.中国首相が人民元切り上げ論に反発
中国では、3月5日に開催された第11期全人代(全国人民代表大会、国会に相当)が14日に閉幕した。閉幕後に温家宝首相が記者会見し、米国などが中国に対して人民元切り上げの圧力を強めていることについて、「他国を批判して強制的な手段を使って為替相場を切り上げを迫るやり方に反対する。圧力は元の制度改革にとっても不利益になる。」と述べた。
温首相は、元について2005年7月の制度改革により、対ドル相場が21%上昇したと強調し、中国は元を安定させることにより、「世界経済の回復に寄与した」と述べた。また、人民元について、「過小評価されていない」とし、「合理的で均衡の取れた水準で安定を保つ」と述べた。
人民元相場に関する決定権は中国が握っている。したがって、中国の当局が景気回復に自信を持たない限り、人民元切り上げは再開されないと見るべきであろう。世界景気が安定的な回復軌道に乗り、中国の輸出が伸び、中国の景気回復が確かなものにならない限り、人民元の対ドル相場は引き続き安定した状態が続くだろう。
3.米政界は切り上げ圧力を強める
これに対して、米国議会は元切り上げに向けて、圧力を強める姿勢を示している。ミシュート下院議員(民主党)ら超党派の議員130人がロック商務長官及びガイトナー財務長官に書簡を送付した。同書簡で、人民元相場をドルに連動させるのは通貨操作であるとし、「中国製品の米国への輸入関税」を視野に入れて、元切り上げ圧力を段階的に強めるよう、米国政府に要請した。
オバマ大統領も昨年秋以降は、人民元切り上げへの要求を強める姿勢を示している。先日、アジアへの輸出が増えれば「数十万、場合によっては、数百万の雇用が米国に生まれるだろう」と述べた。
中国はこれまで人民元の政治問題化を避けようとしてきたわけだが、今後は米中間で軋轢が高まると予想される。米国の圧力により、中国内の切り上げ反対派の勢いが増すことも考えられよう。
CIEEs諸国情報 (11) 各国の自動車販売台数
CIEEs諸国(中国、インド、及びロシアを初めとする東欧諸国)では、一人当たり国民所得が上向いているため、次第に消費も活発になっている。今回は自動車の販売台数(商用車を含む)について考察しよう。
1.自動車販売の伸びが著しい中国とインド
自動車は消費財の中でも代表的なものであり、その販売動向により、今後の各国の消費を予測する手がかりとなろう。
リーマンショックなどに端を発する金融・経済危機により、2009年には、先進国の景気は大幅に落ち込んだ。2009年の日本のGDP成長率は前年比で▲5.4%、米国は同▲2.7%である(出典:IMF World Economic Outlook, October 2009による予想)。このような経済情勢を反映して、2009年の米国の新車販売台数は1,043万台で前年比▲21.2%となった(図表1参照)。日本の販売台数は461万台、同▲9.3%で、1978年以来31年ぶりに年間500万台割れとなり、また、5年連続の前年割れ。先進国の不振が鮮明である。ロシアも2009年1~11月累計で134万台(同▲50%)と不振。
これに対して中国は1,360万台で同+46.2%と大幅増加。米国を抜いて、初めて年間で世界1位となった。中国の好調ぶりが際立っている。インドも226万台、同+14.3%と好調だ。
図表1 新車販売台数、人口

(出典) 中国汽車工業協会、インド自動車工業会、欧州ビジネス協会、米国オートデータ、日本自動車工業会、外務省
(注) ロシアの新車販売台数データは2009年1~11月分累計
中国、インドともに前年に比べて大きく伸びてはいるが、千人当たりの販売台数で見ると、中国が10.46台、インドが2.20台にすぎない(図表1参照)。これに対して、日本は36.30台、米国が34.31台である。中国、インドの人口は巨大であり、今後も増加すると予想されている。
2.中国の自動車販売は好調を持続
中国では、今年に入ってからも、自動車の販売は引き続き好調だ。1月の新車販売台数は166万台となり(中国汽車工業協会による、以下同)、前年同月比+126.3%となった。また、2月についても、121万1,500台、同+46.3%。2月においても米国の約78万台を上回り、引き続き世界第一位となった。旧正月(春節)が昨年の1月から今年は2月に移動したため、2月の販売台数は1月からは減少した。しかし、1~2月の累計は287万5,700台、前年同期比+83.8%と好調を持続している。
また、2010年通期についても好調が続く見込みであると、中国汽車工業協会の幹部が3月8日に発表した。それによると、中国の2010年の新車販売台数は1,500万台に達し、2015年までは10~15%の成長が続くとしている。
3.インドも引き続き好調
インドでも、自動車販売はここ数年堅調に推移している。2004年の134万台に対して、2009年は226万台と、ほぼ倍増している(図表2参照)。
図表2 インドの新車販売台数

(出典) インド自動車工業会(SIAM)
直近のデータで見ても、好調を持続している。インド自動車工業会(SIAM)によると、2月の新車販売台数は、25万2,572台で前年同月比+43%となり、1月に続いて単月の販売台数の記録を更新した。昨年は農産物の収穫減が心配されたが、最近、農産品価格が上昇したため、農村においても自動車の好調な販売が続いている。
しかし、インドではインフレ懸念の台頭などにより、民間銀行が自動車ローンの金利を引き上げている。ローン金利の引き上げにより、今後は販売台数が伸び悩むことも予想される。
このように、中国、インドでは2010年以降も自動車販売が堅調に推移する可能性が高い。好調な消費が内需を支え、それが経済全体の拡大につながるという好循環を期待することができよう。
CIEEs諸国情報 (10) 高まるロシアの存在感
CIEEs諸国(中国、インド、及びロシアを初めとする東欧諸国)のうち、東欧の中心となっているロシアは、資源大国である点において、中国、インドとは大きく異なっている。また、消費も伸びてくるなど、注目すべき点が多い。
1.資源大国ロシア
ロシアの大きな強みのひとつは、豊富な資源だ。原油生産量についてはサウジアラビアに次いで世界第2位、埋蔵量で7位、天然ガスについては埋蔵量・生産量とも第1位である(図表1、2参照)。特に天然ガスの埋蔵量は巨大であり、生産量の3割をドイツ、フランス、イタリア、東欧諸国などに輸出しており、国内消費分も多い。石油・天然ガス輸出余力は大きいと見られる。
石油、天然ガス、石炭などのエネルギー資源だけでなく金、銅、ニッケル、マグネシウム、錫、亜鉛、アルミニウム、タングステン、モリブデンなどの鉱物資源も豊富である。また、国土の5割を占めている森林資源のほか、魚介類など水産資源も豊富である。豊富な資源がロシア経済を下支えしている。
図表1 国別原油産出量(2008年)

(出典) BP Statistical Review of World Energy 2009
図表2 国別天然ガス埋蔵量(2008年)

(出典) BP Statistical Review of World Energy 2009
2.消費の拡大
2000年代半ば以降のロシア経済の発展は、確かに原油、天然ガスその他の資源価格の高騰に支えられてきた面もあった。しかし、消費についても順調に拡大してきている。図表3の通り、実質可処分所得が伸びてきており、それに伴い、商品小売販売高も順調に伸びてきた。
中国などと異なり、ロシアでは消費への意欲が強い。ロシアにおいては過去に何回も経済・金融危機があり、自国の通貨、銀行システムへの信頼度が低いと見られる。所得が低い階層でも、消費性向が高い。
また、ロシアにおいては、貧富の格差が大きいというイメージがあるかもしれない。だが、ロシアの貧困層はかなり減少している(図表4参照)。所得の豊かな中間層が拡大することにより、今後も消費がロシア経済を牽引することが期待できよう。
地域別に見ても、モスクワに次いで、サハリン州では、油田の開発などで潤い、所得が向上している。今後は資源が豊富な地域を中心として、モスクワに続く所得の高い地域が出現することも予想される。
2010年には原油価格が100ドル/バレル近辺まで上昇するとの予想もあり、資源価格については注意していく必要があろう。また、ロシアでは、今後の消費拡大にも期待できる状況にあるといえよう。
図表3 商品小売販売高と実質可処分所得の対前年比伸び率

(出典) ロシア連邦国家統計局
(注) 12月の前年同月比
図表4 ロシアの貧困層の割合

(出典) 証券アナリスト協会
CIEEs諸国情報 (9) 各国の発展段階 その2
CIEEs諸国(中国、インド、及びロシアを初めとする東欧諸国)の発展段階については、以前に「 (7) 各国の発展段階」で概略をご報告した。今回は主に、各国の一人当たりGDP(国内総生産)の推移・水準について、日本と比較することにより、別の角度から探ってみたい。
1.高い成長を見せるCIEEs諸国経済
日本は1968年にドイツを抜いて、米国に次いで世界第二位の経済大国になった。しかし、2009年には日本のGDP50,486億ドルに対して、中国は47,577億ドルと肉薄した(IMF World Economic Outlook October 2009 による予想、以下同)。そしてついに、2010年には日本51,874億ドルに対して中国は52,633億ドルと逆転し、中国が世界第二位の経済大国にのし上がる見通しである。
同様にロシア、インドも着実に世界における経済的な地位を向上させている(図表1参照)。そして、ゴールドマンサックス証券では、インド経済が年5.3% ~ 6.1%の成長を続ければ、2035年には同国が世界第三位の経済規模になると予想している。
日本ではデフレが続き、景気全般が精彩を欠いているのに対して、CIEEs諸国の発展は目覚しく、国全体としてはすでに相当な水準に達しつつあると言えよう。
図表1 日本、中国、インド、ロシアのGDP総額

(出典) IMF World Economic Outlook October 2009 (注) 2009年以降は予想
2.一人当たりGDPではまだ低水準
ところが、これを一人当たりGDPで見ると、様相はかなり違ってくる。というのは、特に中国、インドは人口が巨大であるためだ。一人当たりの水準ではまだまだ発展途上であることがわかる(図表2参照)。
2009年についてみると、日本の一人当たりGDPが39,573ドルであるのに対して、ロシアは8,873ドルであり、日本で言えば1979年ぐらいの水準である(IMF予想、以下同)。同様に中国は3,565ドルであり、日本の1973年ぐらいの水準だ。インドに至っては、1,032ドルであり、日本の1970年ぐらいの水準よりもはるかに低い。
しかし、CIEEs諸国では一人当たりGDPも、今後、大きく伸びてくることとなろう。特に中国では、2008年の北京オリンピック開催に続いて、2010年、即ち今年は上海万博の開催が予定されている。日本では、1964年の東京オリンピックに続き、1970年には大阪万博が開催された。この時代の日本の一人当たりGDPは1970年において1,966ドルである。これに対して、2009年の中国の一人当たりGDPは3,565ドルであり、3,000ドルを越えて来ている。一般に、一人当たり国民所得(GDP)が3,000ドルを超えてくると、自動車、家電製品などの購入が活発化し、ますます経済が発展するといわれる。中国ではこれから一層消費が拡大し、大きな発展を迎えることになるだろう。
日本では、オリンピック、万博を経て経済が高度成長を成し遂げ、株価も大幅に上昇したのは周知の通りである。中国などCIEEs諸国についても、同様の展開になることが期待できよう。
図表2 各国の一人当たりGDP

(出典) IMF World Economic Outlook October 2009
CIEEs諸国情報 (8) 調整色強める各国株式市場
2009年にはCIEEs諸国(中国、インド、及びロシアを初めとする東欧諸国)の株式市場は大きく上昇し、先進国の株式市場もそれなりに反発した。しかし、2010年に入ってからは各国ともやや調整色を見せている。CIEEs諸国などの株式市場の現状について、考えてみたい。
1.調整色を見せる各国株価
上記の通り、2009年には、CIEEs諸国を初め各国の株価は堅調に推移したわけだが、今年に入って調整色が出ている。
中国、インドの株価を見ると、図表1の通り、2009年には2008年末に比べてそれぞれ中国が+80.0%、インドが+81.0%となり、ロシアとともに、CIEEs諸国の株価は大幅に上昇した。しかし、2009年末から2010年の1月末までに、中国が▲8.8%、インドが▲6.3%となった。
ほかの国についても同じ期間に米国のNYダウが▲3.5%、日本のTOPIXが▲0.7%となるなど、各国とも軟調であった。この背景としては、米国が金融機関に対する監督を強化する方針を示したこと、あるいは各国の景気の二番底を懸念する向きがあることなどがある。では、中国、インドの個別の事情についてはどうだろうか。
図表1 中国、インドの株式市場の推移

(出典) Yahoo! Finance (注) 月末値で表示
2.中国が金融引き締め
まず、中国についてはどうか。中国は今年に入り、金融引き締めの姿勢を示している。中国は今年の1月12日に預金準備率の引き上げを発表した。続いて2月12日にも再び預金準備率を引き上げると発表した。これにより、大手金融機関では、原則として預金準備率は16.5%となった。預金準備率が上昇したことにより銀行は手元資金を厚くする必要があり、融資の増加が抑制されることとなろう。
中国の昨年12月のCPI(消費者物価)は、前年同月比+1.9%と、比較的高い伸びであった。1月にも同+1.5%となり、今後CPIの上昇率が高まってくれば、利上げ観測も台頭してくることとなろう。
中国は2月13日から春節(旧正月)に入っているが、通常、春節には消費が活発になる。春節の前に、中国人民銀行(中央銀行)は資金供給を厚めにしていた。春節のあと人民銀行は余剰な資金を回収するという意図であると思われる。即ち、当局の金融引き締めの意向は、現在はそれほど強くはないと見られる。
中国の景気は極めて好調だ。中国国家エネルギー局によると、1月の電力消費量は前年同月比+40.1%で、3,531億キロワットとなった。春節が昨年の1月から2月にずれたことによる影響を考慮すると、実質的に昨年比2割程度の増加である。また、春節休暇に伴う海外旅行も盛んで、中国からの海外旅行客は1,200万人に達すると予想される。このように好調な景気を背景に一部に利上げ観測もあるが、それが今後の株価上昇を抑える可能性がある。
図表2 中国の預金準備率

(出典) ロイター (注) 大手金融機関の預金準備率を表示
3.インフレ懸念の高まるインド経済
中国とともにインドの経済も極めて好調だ。IMF(国際通貨基金)は、インドの実質成長率を、昨年10月時点の予想から今年1月には、2010年については6.4% → 7.7% に、2011年についても7.3% → 7.8% に、それぞれ上方修正した。インド政府が2月12日発表した2009年12月の鉱工業生産も前年同月比で+16.8%となった。
インドでは、リーマンショックを初めとする金融危機による打撃は比較的軽微であった。内需拡大のため、政府は積極的な公共投資を行い、インフラの整備を図っている。
しかし、同国はもともと資源が少なく、景気拡大に伴い輸入が増加し、さらに旱魃により農作物の価格が上昇した。その結果、昨年12月の卸売物価は前年同月比+7.3%、今年1月も同+8.6%となった(図表3参照)。
政府の積極的な公共投資により、財政赤字も拡大しており、財政赤字の対GDP比は、今年度は6%台後半となりそうだ。今後は政府によるインフラ整備にブレーキがかかることも予想される。
インフレ懸念や財政赤字拡大により、政策金利(レポ金利)が4月までに引き上げられるとの観測が台頭している。政策金利はこれまで据え置かれてきたが、4月29日開催予定の金融政策決定会合で金利が引き上げられるとの予想が高まっている。政府・中央銀行は金融危機以後の緩和路線の「出口戦略」を探ることとなろう。
このように、中国の引き締め気味の政策、インドのインフレ懸念が、今後、両国の株価上昇を抑える可能性はある。ただ、米国では消費、住宅などの指数で明るさが増している。先進国の景気回復が鮮明になってくれば、世界的に株価を下支えすることも期待できよう。
図表3 インドの卸売物価上昇率(前年同月)

(出典) インド商工業省
CIEEs諸国情報 (7) 各国の発展段階
これまでCIEEs諸国(中国、インド、及びロシアを初めとする東欧諸国)の株価動向、あるいは各国の経済の現状、見通しについてお話してきた。2009年には中国、インド、ロシア各国の株価が先進国と比較して力強く反発しており、その背景として、中国、インドの経済が相対的に堅調であり、ロシアも回復しつつあるということをご説明してきた。
さて、これら各国の経済の発展段階は日本に比べると、まだまだこれからといったところである。だとすれば、日本の経済及び株価の推移を考察すれば、これら新興国の将来を予想する上でかなり参考になろう。
1.日本経済と株価の動き
第二次大戦後に、日本はドイツとともに驚異的な経済成長を遂げた。日本の株価については第二次大戦後バブルの時代まで大いに上昇したものの、その後大いに下落したという印象をお持ちの方も多いであろう。
図表1の通り、1980年代には日本はまずまずの経済成長を達成しており、TOPIX(東証株価指数)も1989年末に2,881ポイントをつけるまで、急激に上昇した。しかし、1990年代に入ると、経済成長率が急激に低下し、株価もそれに先行して下落してきたことがわかる。株価には一般に先見性があることから、振り返ってみると、経済成長率の明らかな低下に対して、株価下落が先行していたと言えよう。
図表1 日本のGDP成長率及びTOPIXの推移

(出典) IMF World Outlook 2009, October、東証
2.CIEEs諸国の発展段階
中国、インド、ロシアの国力、発展段階は日本と比べるとどのような状況にあるのだろうか。まず面積を見ると、ロシアが最も広く、世界第一位である。中国は第三位、インドは第七位である。ちなみに、日本は60位である。国土が広い中国、インドでは今後相当程度のインフラ投資が行われ、関連産業が発展することとなろう。ロシアの場合は、天然ガス、石油を中心とした資源関連の投資が今後も続くこととなろう。
また人口についても、中国が現在世界第一位、インドが第二位であり、やがてインドが世界一になる予想されている。巨大な人口を背景として今後中間所得層が拡大すると見られ、両国の消費が増大し、ひいては経済成長にも大きく貢献しよう。特に中国では、これまで経済成長を支えて来たのは主に固定資産投資と輸出であったが、今後は政府も消費の拡大を図ることとなろう。投資が過剰であれば、鉄鋼などの施設、乗用車などの生産設備が過剰になる恐れがあり、ひいては均衡のとれた経済成長ができない恐れがある。
では、各国経済の発展段階は日本と比べるとどうか。GDPの総額を2009年についてみると、中国が日本に肉薄しており、2010年には中国が日本を追い越して世界第二位に躍り出る可能性が高い(IMF予想、以下同)。しかし、一人当りのGDPで見ると、日本の4万ドル弱に対して、中国は3,500ドル程度に過ぎない。日本に比べるとまだまだ発展段階としては低い。一般に、一人当たり国民所得が3,000ドルを超えてくると、乗用車、家電製品、住宅などの購入が活発化してくる。中国はまさに大きな消費の飛躍の時期に入りつつあると言えよう。
これに対してインドの一人当たり国民所得はまだ1,000ドル強である。中国と比べるとさらに発展段階は低いが、最近は日本のスズキなど低価格自動車の売れ行きが急増している。インドの中間層も今後は大きく発展してくると予想できる。
ロシアについては、一人当たり国民所得では中国、インドを大きく上回ってはいるが、経済に与える影響としては、消費よりも資源価格の動向、また同国内の天然ガス、石油の産出量を見ておいた方がよいだろう。
図表2 面積、人口、GDPの比較

(出典) IMF World Outlook 2009, October、外務省、国際連合「世界の人口推計(2008年度版)」
(注) GDP総額、一人当GDPは2009年IMF 予想
CIEEs諸国情報 (6) 存在感の増すインド経済
当社が注目するCIEEs諸国(中国、インド、及びロシアを初めとする東欧諸国)のうち、これまで中国、ロシアについてご説明してきた。日本人にとっては、一般に中国は馴染み深いが、ロシアとともにインドについてはそれほど知られていないのが現状だろう。そこで、今回はインド経済について、概略をご説明したい。
1.堅調な成長の続くインド経済
2008年以降、サブプライムローンやリーマンショックに端を発する世界的な金融危機の拡大により、2009年には先進国あるいは新興国の多くでGDP(国内総生産)成長率が大幅に低下するか、マイナスに転落した。それに対して、CIEEs諸国、中でも中国の景気の強さが際立っているのは、これまでの当ブログでご紹介したとおりである。
中国とともに、インドの経済もきわめて堅調に推移する予想である。IMFの2009年10月予想によると、インドの成長率は、7.3%(2008年) → 5.4%(2009年、予想) → 6.4%(2010年、同) となっている (図表1参照) (注 IMFでは2010年1月に2010年を6.4%→7.7%などと上方修正)。
また2009年後半からは先進国において、世界経済の安定感が増している。世界的な景気の立ち直りにより、2010年以降のインド経済の成長率は再び加速する可能性が高いといえよう。
図表1 インドのGDP及び同成長率

(出典) IMF World Outlook 2009, October
2.長期的にも存在感が増すこととなろう
このように、ここ数年の単位で見て、先進国と比べて好調なインド経済だが、長期的にはますます存在感が増すこととなろう。ゴールドマン・サックスでは、同国経済が年5.3%~6.1%の成長を続ければ、2035年には世界で三番目の規模になると予想している(図表2参照)。しかし、インドは2009年の落ち込みを除くと、2005~2008年において、平均で8%を超える成長を達成している。インド経済は同社の予想よりも早く世界第三位の規模に達する可能性もある。
図表2 インド経済は世界第三位の規模へ

(出典) Goldman Sacs BRICs Report 2003
では、インド経済が長期的に発展すると予想される要因は何であろうか。
1つの大きな要因として人口がある。中国の人口が13億3,630万人であるのに対して、インドは11億8,620万人となっている(国連人口基金「世界人口白書2008(The State of World Population 2008)」による、以下同)。2050年には16億5,800万人に達すると予想されており、14億800万人の中国を上回ることとなる。
同白書によると、インドの2008年の出生率が2.78%であるのに対して、中国は1.73%である。人口の増加によりインドの中間所得層が増大すると予想され、インド経済の発展を促すこととなろう。中国がこれまで輸出、投資に依存した経済成長を達成して来たのに対して、インドの経済は主に民間消費によって支えられている。
このほかの要因として、インフラが未整備なため、インフラへの投資による内需拡大、それによる雇用の拡大も期待される。また、第三次産業の比率も高い。インドには理数系に強い学生・若者が多いのは周知の通りだが、今後はITサービスの輸出がますます拡大しよう。
これらの要因を考えると、インド株については、長期的に期待できよう。
CIEEs諸国情報 (5) 堅調な推移を見せるロシアの株価
当社は中国、インド、及びロシアを初めとする東欧諸国のことをCIEEs諸国と呼んでいる。これら3カ国の株価が昨年末以来大きく反発したことを、これまでのコラムでご報告してきた。この背景には、中国、インドの経済が極めて安定しており、ロシアについても2010年には景気回復の見通しであることがある。
1.上昇の際立つロシアの株価
2008年12月末以降の各国の株価の動きを見ると、上記の通り、CIEEs諸国の株価はきわめて堅調である(図表1参照)。
中でも株価が堅調に推移しているのが、ロシアである。2008年12月末と2009年12月末の比較で、ロシアの株価指数であるRTS指数は、実に129%もの上昇となっている。
一方、GDPの成長率で見ると、中国が8.8%(2009年IMF予想) → 9.0% (2010年同、以下同様)、インドが5.3% → 6.4% であるのに対して、ロシアは ▲7.5% → 1.5% となっている。ちなみに日本は ▲5.3% → 1.6% である。確かにロシアの景気は急回復する見込みではあるが、成長率自体は、必ずしも高いわけではない。
図表1 CIEEs諸国及び日米の株価推移

(出典) Yahoo! Finance。中国は上海総合指数、インドはムンバイSENSEX30種指数、ロシア
はRTS指数、日本は東証株価指数(TOPIX)、米国はNYダウ。
(注) 株価は月末値を元に、2008年12月末を100として相対化。
2.堅調な動きを見せる商品市場
中国、インド、ロシア各国は、いずれも今後経済が大きく拡大する可能性が高いことについてこのコラムでも、たびたび紹介してきた。しかし、商品市場の動きとの関係では、3カ国で大きな違いがある。インドは天然資源の大半を海外からの輸入に頼っている。中国も原油などを生産しているが、国内需要の急拡大により、原油、天然ガス、鉄鉱石などの輸入が急拡大しているのが現状だ。
これに対して、ロシアは逆に資源大国である。ロシアの資源の状況について述べる前に、世界的な商品市況全般の動きを見ておこう。
図表2 商品指数の動き

(出典) Bloomberg
図表2に示したのは、国際商品の代表的な指数の動きである。各指数の動きが異なるのは、商品指数に含まれている原油、金属、穀物などの比率が相互に異なるためである。直近の指数はやや下落してはいるが、ここ1年でいずれも上昇してきたことがわかる。商品市況の上昇が、ロシアの株価に影響を与えていると思われる。
3.資源大国としての重みが増すロシア
では、原油、天然ガスについて、ロシアはどれぐらいの実力を有しているのか。
まず原油の産出量で見ると、ロシアは2006年に1日当たり977万バレルの産出であり、世界第2位である(出典:BP、以下同)。ちなみに1位はサウジアラビア、3位は米国である。
天然ガスの確認埋蔵量で見ると、2006年にロシアは48兆立方メートルで首位である。2位はイラン、3位はカタールとなっている。
原油、天然ガス以外の金、白金、パラジウムなどの産出も極めて多く、これらの価格上昇が株価に好影響を与えていると言えよう。
今年の原油生産はさらに拡大する見通しだ。ロシアの2010年の原油生産量は日量1,000万バレルを超えて過去最高になると予想されている(投資銀行ルネサンス・キャピタルによる)。大手の国営石油会社が増産する予定であり、また新規油田での生産量も拡大する。
従来はサウジアラビアが原油の生産量及び輸出量で世界首位であった。しかし、2009年にはロシアが生産量及び輸出量でサウジアラビアを上回り、世界首位になった可能性が高い。原油価格は2009年に30ドル/バレル台まで下落した後、最近は73ドル/バレル近辺まで上昇してきている(1月27日NYMEX先物は73.76ドル)。ロシアの原油などの生産が拡大し、強含むとすれば、ロシアの株価にも好影響を与えるものと予想される。
CIEEs諸国情報 (4) 好調が続く中国経済
2008年9月のリーマンショック後、日本を初めとする先進国が深刻な不況に見舞われたのは周知の通りである。これに対して当社がCIEEs諸国と呼んでいる中国、インド、及びロシアを初めとする東欧諸国の経済が好調に推移しているのは、第一回のブログでご紹介した通りである。
この中でも特に経済が好調であるのは、中国である。最近の経済指標で見てもその好調さは際立っている。以下にその概要を紹介したい。
1.中国が世界第二位の経済大国に浮上の見通し
最近の指標を見る前に、まずは長期的な見通しの点で日本と比較してみよう。IMFのデータによると、1990年の日本のGDP(国内総生産)が30,580億ドル(1ドル=90円として、約275兆円)であったのに対して、中国は3,903億ドル(同35兆円)に過ぎなかった。
しかし、2010年には日本が51,875億ドル(同467兆円)の予想であるのに対して、中国は52,633億ドル(同474兆円)となっている(図表1参照)。2009年まで日本は世界第二位の経済大国であったが、2010年には中国が第二位に浮上する可能性が高まった。
もっとも、両国のGDPの比較はドル換算でなされるのが普通である。2009年において円は対ドルで上昇し、人民元はドルに対して上昇が停止していた。そのため、為替動向によっては、両国の順位逆転の日が後ずれする可能性はある。
図表1 中国と日本のGDP総額の推移

(出典) IMF World Economic Outlook October, 2009
(注) 2009年以降は予想
2.2009年10-12月期GDPも好調
では、最近発表になった指標ではどうか。中国国家統計局は、2010年1月21日に、2009年10-12月のGDP(国内総生産)が前年同期比で10.7%の増加になったと発表した。2009年通年の成長率の伸び率は前年比8.7%となり、中国政府の目標である8%を達成した。
中国政府は2008年11月に総額4兆元(約57兆円)の景気対策を打ち出し、その結果公共投資が大幅に増加した。都市部の固定資産投資は前年比30.5%と、大幅な伸びとなった。特に全国的な高速鉄道網の建設など、インフラへの投資が目立つ。また、政府は金融機関の融資残高の総量規制を撤廃するなど、適度に緩和された金融政策も功を奏した。
さらに、2009年の自動車販売台数は、前年比46.2%増加して、1,364万台となり、世界一となった。小売売上高については、前年比15.5%と堅調であった。
しかし、消費については、まだ中国経済を強く牽引するには至っていない。これまでは公共投資が経済を牽引してきたが、中国政府は個人消費の拡大を2010年には引き続き重視する姿勢をとっている。
3.輸出も回復傾向
好調な公共投資、堅調な個人消費に対して、外需は経済成長の抑制要因となった。2009年の貿易黒字は1,960億ドルで、前年比▲34.2%となった。これは輸出の不振が原因である。2010年1月10日発表の中国税関総署によると、2009年の輸出額は前年比▲16.0%の1兆2,016億ドル(約108兆円)である。これは1983年以来の前年割れである。
ただ、ドルベースでの輸出額は2008年まで首位であったドイツを上回ったと見られる。即ち、中国は2009年に輸出額で世界一になった公算が大きい。
また、直近の輸出額も回復傾向にある。2009年12月の輸出額は1,307億ドルで、前年同月比17.7%となった。米国を初めとする先進国の景気が底入れしており、中国の輸出も回復の傾向にある。
CIEEs諸国情報 (3) 中国は本当にバブルか
2009年には日本を初めとする先進国が不況に直撃される一方、中国は2009年に続き2010年にも比較的高いGDP成長率を維持すると見られている。はたして中国経済はバブルなのか、あるいは健全な成長を続けているかについては、多くの人にとって関心の高いところであろう。
英国の経済誌に「Money Week」があるが、この中で経済学者であるクリス・ショルト・ヒートン氏が「Is China really a bubble?」(中国は本当にバブルか)という記事を書いている(2010年1月18日付)。ここではその抜粋を以下に紹介したい。
1.中国経済がバブルであるとの懸念
中国では驚く出来事がよく起こるが、先週もサプライズがあった。グーグルをめぐる規制についての論争ではない。中国の中央銀行である中国人民銀行が預金準備率を引き上げたのだ。預金準備率とは、商業銀行が預金に対する一定の資金を中央銀行に預けなければならない比率のことである。預金準備率の引き上げは中国による引締政策の第一歩と考えられる。
これは非常に好ましい動きだ。以前、中国における最大のリスクは、当局が景気刺激策を長く続け、景気が過熱することであると私は指摘した。今回、当局が引き締めを開始したため、中国におけるバブルの懸念は後退したといえよう。
2.中国にはバブルの兆候はあるのか
そもそも、投資家は中国の金融政策が緩和しすぎているとの懸念をなぜ持つのであろうか。2009年に、世界景気悪化による信用逼迫の緩和を意図して、当局は銀行に対して積極的に貸し出しを行うよう指導した。
中国の銀行は依然として大半が国有であり、政府の指導を受け入れた。図表1の通り、貸付残高の前年比伸び率は30%を超えている。中国では輸出は依然として不振であるが、貸付の増大により、景気回復が期待された。ただし、株価及び不動産価格が上昇し、バブルなのではないかとの懸念も生じた。
図表1 中国における銀行の貸付残高の前年比伸び率

(出典) ブルームバーグ
ただ、一概に現在の中国経済がバブルであるとは決め付けられない。株価については、図表2の通り、2009年に入って力強く回復した。ただ、CSI300指数の予想PER(株価収益率)は18倍であり、バブルであるとはいいがたい。
図表2 CSI300指数は力強く反発

(出典) ブルームバーグ
不動産についてはどうか。中国の住宅不動産市場は理解するのが難しい。所得との対比での住宅価格だけを見て、バブルが存在するとの結論を導いてはならない。ただ、不動産価格が急上昇している地域については、バブルの兆候はある。
3.商業用不動産及び重工業への投資
商業用不動産については、バブルの兆候がもっと強い。いや、正確に言うと、バブルが崩壊しつつあると言える。昨年はオフィスあるいはショッピングセンターが建設されすぎ、空室率が急激に上昇し、大都市の一部では空室率が30%を超えている。
重工業、たとえば鉄鋼への投資については、もっと懸念がある。近年、中国は重工業に対して過大な設備投資を行い、資本設備が過剰になった。重工業については、純輸入から純輸出に転換した(図表3参照)。
図表3 GDP比での貿易収支~貿易黒字はどこから生じているのか

(出典) 季節調整済み、3ヶ月移動平均。Heavy:重工業、Electronics:電気機械、Light:軽工業、Primary:一次産品
4.
中国はさらに投資を必要としている
ただ鉄鋼業のような産業に資金の殆ど向かってはいない。インフラへの投資が急増しており、これは長期的には中国経済に恩恵をもたらそう(図表4参照)。
図表4 中国の固定資産投資~インフラへの投資が急激に増加

(出典) 野村インターナショナル
中国の投資の水準が極めて高く、インフラへの投資がさらに必要であるのか、疑問を呈す人もいる。中国の投資ブームはほかのアジアの新興国をも上回る(図表5参照)。
図表5 中国の固定資産投資~インフラへの投資が急激に増加

(出典) IMF、Pivot
しかし、中国を韓国、あるいはタイなどとを比較するのには無理がある。中国はこれらの国に対して約30年遅れていると言え、また国土が巨大である。一部の地域の経済水準は向上したが、別の地域では発展が始まったばかりである。
たとえば、高速鉄道網の建設が2012年まで計画されているが、これは明らかに無駄であるというわけではない。インフラへの投資は即効性はないだろうが、将来的には効果があるだろう。また、重工業への投資についても、一般に多くの調査報告では無駄であるとの結論には至ってない。
5.景気の過熱は避けるべき
中国をかつてのバブルの時代の日本になぞらえる向きもあるが、現在の中国はむしろ60年代の日本に似ているといえよう。もっとも、中国が今後数年でバブルに突入する危険性がないとはいえない。中国の経済成長率の限界を考えねばならない。中国国内の消費の前年比伸び率はおおむね8%である。近い将来消費の伸び率は加速しそうにはない。そのため輸出の大きな伸びがなければ、経済成長率は13%程度ではなく、8-10%程度が適正であるといえよう。
6.現状はバブルであるとは言えない
このような制約条件を考えると、今後1年程度は引き締め策を続ける必要がある。これにより、経済成長率が8%を下回る可能性もある。また、これにより銀行の不良債権が増大する可能性もある。もし当局がそのような事態を恐れるあまり金融緩和策を取ったら、金余りによりバブルが発生し、その後崩壊する可能性もある。もしそうなれば株式の買い場が訪れることとなろう。ただ、そのような展開は今後の中国当局の政策にかかっている。
私としては、中国に投資するのは意義があると考えるが、バブルの発生については常に警戒している。もちろん、今後数ヶ月でさらに引き締め政策が強化されれば、バブルが発生する可能性はさらに低下することとなろう。
CIEEs諸国情報 (2) 堅調な値動きを見せる各国株価
中国、インド、及びロシアを初めとする東欧諸国を、弊社ではCIEEs (China, India, Eastern Europe) 諸国と呼んでいることを、前回のブログでご紹介した。
CIEEs諸国は近年高い経済成長を遂げてきており、今後も大きな発展が期待されている。
では、最近の株価動向についてはどうであろうか。
1.急速に回復したCIEEs諸国の株価
米国ではサブプライム問題が2007年3月頃に顕在化し、それに続く2008年3月の米大手証券ベアスターンズ破綻(JPモルガンが買収)、さらに9月のリーマンブラザーズの破綻によるリーマンショックにより、2008年には世界各国の株価は大きく下落した。
しかし、リーマンショック以降の世界各国の景気刺激策により、2009年には、各国の株価は落ち着きを取り戻した。CIEEs諸国、日本及び米国の株価を2008年末と2009年末とを比較した騰落率は、図表1の通りである。日本の上昇率が5.6%にとどまっているのに対して、中国が80.0%、インドが81.0%、ロシアが128.6%と大幅に上昇した。2010年以降の各国の経済は堅調に推移すると予想されており、株価はそれを先取りする形で反発したと考えられる。
図表1 中国、インド、ロシア、日本、米国の株価上昇率

(出典) Yahoo! Finance。中国は上海総合指数、インドはムンバイSENSEX30種指数、ロシア
はRTS指数、日本は東証株価指数(TOPIX)、米国はNYダウ。
2.最近の株価の疎き
では、ここ数ヶ月の動きについてはどうか。日本では鳩山政権が2009年9月に発足してから、円高の影響もあり、11月にかけて株価が下落した。東証株価指数(TOPIX)は11月27日に底打ちしたので、11月27日と2010年1月15日とで比較してみた。図表2の通り、日本の上昇率が最も高く、ロシアがそれに次ぐ上昇となったが、中国、インドはあまり上昇していない(図表2参照)。
日本株は2009年にはCIEEs諸国など新興国の株価に対して、大幅に上昇が遅れていた(図表1参照)。また、米国などほかの先進国と比較しても、上昇率が低かった。そのため、日本株は出遅れ感から買われていると見ることもできる。
図表2 中国、インド、ロシア、日本、米国の株価上昇率

(出典) 図表1に同じ。
3.バイロン・ウィーン氏の「2010年の10大びっくり予想」
さて、話は少し変わるが、ブラックストーン・アドバイザリーのバイロン・ウィーン氏は、毎年年初に「10大びっくり予想」を発表している。2010年1月4日に発表された「2010年の10大びっくり予想」は、以下の通りである(出典 2010年1月4日 Blackstone Group Press Release)。
- ① 米国の実質経済成長率は大方の予想の5%を上回り、失業率は9%を下回る。
- ② FRB(米国連邦準備理事会)はゼロ金利政策を解除し、FF金利は年末までに2%まで上昇。
- ③ 米国債の発行増大と海外中央銀行による買い意欲後退により、長期金利は5.5%を上回る。
- ④ S&P500の値動きは激しく、年前半に1,300まで上昇した後、勢いを失い10,000まで下落し、年末には2009年末と同程度(1,115.10)で取引を終える。
- ⑤ 購買力平価で見て著しく割安であるため、ドルは円に対して100円を上回り、ユーロに対しては1.30を下回る水準まで上昇。
- ⑥ 円安を輸出の回復により、日本株が先進国市場で最も上昇する。
- ⑦ 気候変動におけるイニシアティブを握るべく、オバマ大統領は原子力開発促進の法案を推進する。
- ⑧ 米国の景気回復によりオバマ人気が回復する。11月における中間選挙で、民主党の議席減少は予想よりはるかに少ない20にとどまる。
- ⑨ 金融規制法案が金融業界寄りに修正され、金融株が急騰する。
- ⑩ イランの社会不安が加速し、アハマディネジャド大統領が失脚する。
この中で、株価について具体的に言及しているのは、④と⑥である。米国の株価が行って来いになると予想するのに対して、日本株については、先進国市場において相対的に上昇率が高いと予想している。日本株はここ数年ほかの国の株価に対して出遅れているため、今年は堅調な展開になる可能性がありそうだ。だが、中長期的な経済予測からは、やはりCIEEs諸国の株価動向に今後も注目する必要があろう。
CIEEs諸国情報 (1) 堅調に推移する各国経済
このところ、世界経済において新興国の存在感が高まっている。
中でも注目を集めているのが、中国、インド、ロシアをはじめとする国々であり、弊社ではこれらの国々をCIEEs (China, India, Eastern Europe) 諸国と呼んでいる。
CIEEs諸国は近年高い経済成長を遂げてきており、株価も大きく上昇してきた。今後の経済動向を占うため、日本と比較して論じてみたい。
1.高いGDP成長率
米国におけるサブプライム問題の顕在化、それに続く2008年9月のリーマンショックの影響により、世界の景気は大幅に悪化した。
日本のGDP(国内総生産)は2007年の2.3%に対して、2008年は▲0.7%、2009年は▲5.4%(予想)と大幅に悪化した(出典はいずれもIMF、以下同)。
これに対して、CIEEs諸国は相対的に堅調である。特に中国は世界景気を牽引すると期待されており、2007年の13.0%、2008年の9.0%に対して、2009年も8.5%の予想である。
中国政府は失業対策の観点から、今後も少なくとも8%成長を確保したい意向である。
インドについても堅調であり、ロシアは2009年は落ち込むものの、2010年以降は回復する見込みである(図表1参照)。
図表1 中国、インド、ロシア、日本のGDP成長率

(出典) IMF World Outlook 2009, October
2.落ち着きを取り戻すインフレ率
インフレ率についても、落ち着きを取り戻しつつある。
世界景気の後退により、中国、ロシアともインフレ率が低下している。
インドでは堅調な国内景気により、2010年には若干のインフレ懸念がある。
デフレ懸念の強い日本とは対照的である(図表2参照)。
図表2 中国、インド、ロシア、日本のインフレ率

(出典) IMF World Outlook 2009, October
3.経常収支も安定して推移
GDP比での経常収支も安定して推移している(図表3参照)。
特に中国の輸出は好調であり、2009年の輸出額は世界一になった公算が大きい。
インドについては、原油価格の上昇と輸出の不振から2007年から2008年にかけて貿易収支が悪化した。
ITサービスの輸出と海外からの送金は好調であり、今後は景気の回復に伴い、輸出が上向くことが期待されている。
図表3 中国、インド、ロシア、日本の経常収支(対GDP比)

(出典) IMF World Outlook 2009, October

